また会いましょう
例年より早い桜の開花宣言。
横殴りの風が吹き、あっという間に花見の機会は去っていった。
今はというと、冬に逆戻りしたかのように肌寒い日々が続いている。
一年という周期の中で、桜を楽しむことができる時間は言葉通り一瞬で、瞬く間に過ぎていってしまう。
また桜が咲くのは一年後。
一年後同じ桜を見れるのだろうか。
否、多分、季節は循環しているようでゆっくりと、しっかりと変容している。
四季だって、暦だって、勝手に人がつけたものだしね。
同じものはもう見れないし、もう一回チャンスがあるなんて嘘なのかも。
あの日こうすればよかったとか、しなければよかったとか、救いようもないことを考えながらもやもやプカプカしている。
いつぶりかわからないほど時間が空いたけど、今夜じっとりとした邦画をみた。
僕はじっとりとした邦画が大の苦手で、しっかりバッドが入るので、基本的に敬遠している。
それでも苦手なものだってちょっと欲しくなることがある。
脱ぎたての靴下の匂いをかぎたくなる感じ。
今日がその日だった。思い立ったらすぐやってみる。
一年で一本くらいは見とかないと、靴下の匂いも忘れてしまうし。
何より僕には日々を忙殺して、考えたくないことから逃げる悪癖があるから。
多分、"普通"に生きていくには余計な感傷だし、モラトリアム的な、甘え的なものとも捉えられやすい嗜好品なんだろうけど。
それでもやっぱり忘れたくなかったりするよね。
じっとりした春の夜には、沈めてみるのもいとをかしってね。
いつか全部忘れてしまうとしても、思い出せなくなるとしても、それは今すぐの話じゃない。
また、いつかじっとりとした春に会いたいと思える日が来るまで、しばらくの間、さようなら。